箱の表側                           箱の裏側

 学研の「大人の科学」シリーズの中から今回「スターリングエンジン」を組み立ててみた。このエンジンは以前から知ってはいたが、いまいち動作がわからないままになっていた。蒸気ピストンとか内燃機の理屈はよくわかるが、このエンジンのような気体の膨張・圧縮で仕事をするという原理はよくわかるのだが、本当に高速で動作するということが可能なのだろうか、という疑問をいつも抱いていた。

 それであれば実際にスターリングエンジンを組み立てて動作させてみればその疑問も晴れるだろうということで、今回9800円の大枚をはたいてキットを買ってきた。

 箱を開けてみると2段に渡ってコマゴマとした部品が一杯入っている。約3時間で完成出来ると説明書に書いてあるが、今回はじっくりと組み立てことにした。というのは現在、木造帆船「バウンティ」を組み立てているが、あいにく発行所が手を引いてしまい、代わりの会社が引き受ける予定になっている。しかし、残りの部品は4月に入ってからの配布ということで、その間、退屈なのでこのキットを組み立てみようというのも、もう一つの理由である。

  
                箱の中身は二段重ねにきれいに納められている
●飾り台を作る


 まずは説明書通りに作り始めたが、最初にブロック毎に必要な部品を揃えてから組み立てに入るのが肝心である。そうしないと制作している最中に部品を探すという手間、暇がかかる。

 組み立ては至って簡単であり、「大人の科学」と謳っているが小学生でも簡単に組み立てることができると思われた。

 しかし、ピストン周りは微妙な調整があるので調整具合によっては動かないということもあるかも知れない。

 @アルコールランプ
 A車体を載せる台
 B安全レバーと開閉アーム
       飾り台の各部部分

●車体に車輪を付ける

  
           前輪(左)後輪(右)             前後の車輪をシャーシーに取り付ける

 前輪を前輪固定部品に取り付ける。この部品は中央をねじ止めするのだが、スプリングを入れて左右に曲げることができる。普通であればバネワッシャを嵌めるだけでお茶を濁すことから、このキットは良心的である。

 後輪のシャフトとギアは既に組み込み済みであった。そのシャフトに右側の車輪を嵌めて簡単に固定できたが、左側の車輪をシャフトに取り付ける時、大失敗をしてしまった。いくらねじ込んでも固定でないのである。遂にビスをねじ切ってしまった。トホホである。しかし、ビスが軸の中で切れたので瞬間接着剤で固定できたのは不幸中の幸いであった。

 よく考えてみると前輪が左右に動くということは後輪の駆動輪はデファレンシャルギアを付けないと小回りができない。これの簡易装置として駆動輪の片方をフリーにして解決する方法があることをすっかり忘れていた。

 説明書には片方がフリーになることは一切説明がない。良くできた説明書なのだが、肝心なところが抜けているのはいただけない。ただし、後で見たHPのFAQにはきちんと、このことが説明がされている。しかし、HPを見られない人もいるわけだから、説明書に太字で注意書きを書くべきであろう。このようなことはピストンの調整のところでもあった。

●車体にシリンダーを取り付ける

 
 シリンダーをシャーシーに取り付ける前に安全カバーの開閉を行うためのスライドベースを先に取り付けてからシリンダーを固定する。

 このシリンダーを取り付けるビスは4本必要なのだが、前後で長さが異なるビスを使用するようにと説明書に書いてあるが、どこを探しても30ミリのビスしかなく、26ミリは入っていなかった

 大は小を兼ねると思い、そのまま30ミリを使用したが支障はないようだった。

 このシリンダーの取り付け位置はビスの半回転程度も動作に影響が出るという微妙な調整が必要であった。

●レバーを組み立てる

 ギアに接続しているレバーは3本あって、プロペラ・発電機・車輪のそれぞれを同時または単独に動作させることができる様になっている。なおモーターによる発電機はSW付きのランプを光らすことができる。なぜコストのかかるSW付きなのかわからないが、強いていえば発電機単独の時とSWオンでランプを光らせた時ではエンジンの回転数が少し変化するので発電機に負荷を掛けると重くなるという学習のため付けたのかなと思ったりしている。
  
 組み立て前のレバー周り部品。主要部分は組み立て済み     組み立て完成写真



 一応組み立てが終了したらモーターを回して各ギアのアタリを確認する。

 各ギアは少し遊びが多いかなと思ったが、このくらいの遊びがあればスムーズに回転するようだ。

 ギアに銅板が付いてるのはピストンを動作させる為のフライホィールです。

 左写真をクリックするとモーターによる回転状況の動画が見られます。

●ピストンを組み立てる

 いよいよスターリングエンジンの心臓部の組み立てに入る。スチールウールで熱交換をするディスプレーサーが、試験管の中をスムーズに動くよう太さを調節し、ピストンの中央にあるパイプに挿入する。

 このようにセットすることによってディスプレーサーとピストンが同じ軸で動作させるという巧妙なやり方である。この方法でも気密性が保たれているということは工作精度が結構高いと思われる。

  
       スターリングエンジンの心臓部の部品     ここまで組み立てるとエンジンを動作させる
       @ディスプレーサーAピストンB放熱器    ことが可能になる。
       Cディスプレーサー止めDプロペラ

最後に安全カバーを車体に取り付けて完成

●アルコールランプでエンジンを動かす

 ここまで完成すると試運転ができる。早速、アルコールランプに火を点し、しばらく経ってからフライホィールギアを指で回転させるが、なかなか始動しない。ピストンとクランクの角度が微妙に違っているようだ。この調整に随分と時間を掛けて、遂に低速ながら連続運転が可能になった。

 しかし、回転があまり上がらないので、ディスプレーサーを新しいものに交換したら勢いよく回転し始めた。大成功ある。恐らく千回転以上は回っている感じである。ディスプレーサーの先はアルコールランプで相当な熱を受けるので次第に焼き切れてしまうので、時々、交換する必要があるようだ。

  
      動作中のエンジン。非常に良く回転します。   アルコールを燃料にして動作させます。
      上記写真をクリックすると「プロペラを回している動画」「走行している動画」を見られます

●完成写真


普段はメカニックなモデルの飾り物として最適である

●後日談

 完成したスターリングエンジンを毎日のように動かして遊んでいたら突然エンジンがストップ。ピストン周りをよく見たらフライホィールのクランクとピストンを接合している鳩目が吹っ飛んでいた

 恐らく高回転に耐えられずに擦り切れてしまったらしい。早速修理をしようと鳩目を探すが適当なものがないので、ビスナットでこしらえた。ナットはダブルにして緩まないようにしようとしたが、それではフライホィールに当たってしまうので、一個のビスのみ使用し、瞬間接着剤で固定した。

 しかし、それでもビスとナットの厚さが、そのままでは厚すぎて他の部品に当たるので、ヤスリで厚さを半分以下に削り、ようやく収まった。その後、試運転したが、最初、ものすごい勢いで回転するので大成功かな思ったが、やがて回転が落ち、遂にストップしてしまうという現象に悩まされ続けられている。現在はやはり新品と交換しなければならないかなと思っている。

 とにかく500ccのアルコールを使い切らないうちにあちこち壊れ始めているようだ。1万円近くも出したのだから、もう少し遊ばせて貰いたかったのが本音である。
  
       鳩目が吹っ飛んでごらんの通り           手持ちのビスナットで修理する

  
       ビスナットはこのように薄く削り落とした     ピストンの中心に入っているチューブも
                                   外れてしまい瞬間接着剤で固定した

 スターリングエンジンを組み立てて、その原理はわかったのかと聞かれれば結論はイマイチである。ゆっくりと回転するのであれば、なるほど膨張と収縮がディスプレーサーによってピストンが動くというのは理解できる。

 しかし、あのような高速回転がなぜ可能なのか、いまだにわからずじまいというのが現在の心境である。

−おわり−

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