1997年10月
1.OA化で文書は洪水状態
最近私たちの身の回りを見渡すと各種の文書が山積みになっているのをよく見かけます。本当に必要な文書というの はそれほど多くないはずですが、次第に古い順番から廃棄するということになります。これとて、なかなか廃棄するのが できずに何個もの段ボールにしまい込む始末。本当に不要になったのか、ならないのかの判断力の弱さ、または何年後 には必要になるかも知れないという思いが、なかなか廃棄できず、結局、ほんの一部しか廃棄できないことになる。そし て、文書は時間とともに、どんどんと蓄積されていくのが現状であろう。
現在はOA(Office Automation)化によって事務機器が盛んに導入され、とくにパソコン、ワープロ専用機、複写機等 があらゆる場面で利用されるようになった。しかし、これが原因で紙の使用量が増えるということは皮肉なことである。
少し前までは、このような事務機器(OA機器)の導入によって紙を使用しない、ペーパーレス時代が到来するとよくい われた。しかし、現在の情報社会では情報量がうなぎのぼりに増大たため、紙の使用量は減るどころか、かえって増加 しつつあるのが現状である。
これは一昔前と比べると情報量が格段と増加し、取捨選択もなしに、すべてを紙で保存しようとするから無理もない話 である。12月、年度末の職場の模様替えで1年間の文書を整理するが、その廃棄の仕方も個人差があるようで、しっか りと溜め込む人、スッカラカンに廃棄する人と様々である。しかし、ほとんどの人たちは前者に該当するようで、数か月も すると、よく机の上で雪崩を起こしているのをよく見かける。雪崩を起こした文書の中でもう一度必要になって掘り出すと いう文書は何枚くらいあるのか、ぜひ聞いてみたいものである。おそらく、そのほとんどか2、3回で不要になるケースが 多いのではないか。
そこで、これらの膨大な文書を机上、引き出し、文書倉庫等から一掃しようとしたのが文書のPDF化である。PDFと いっても何がなんだか、わからない人もいるかも知れないが、パソコンを利用している人はすでに何回かお目にかかっ ているはずである。
2.PDFとは一体何?
PDFとはPortable Document Fileの略で、Acrobat Readerの開発元である米国のAdobe System社が提唱している 「デジタル文書」(電子文書ともいう)の一種である。
最近のアプリケーションのインストールやヘルプ、説明はAcrobat Readerやハイパーリンクの形式で記述されている場 合が多い。これは検索のしやすさ、高圧縮率等の利点で利用されるようになってきた。
これからのアプリケーションは説明文と同時にインストールするハイパーリンクの形式が多くなっていくと思われる。リコ ー・レーザープリンターの設定にその例を見ることができる。
PDFの形式は拡張子が「*.pdf」なのですぐにわかるが、このファイルをクリックしても読むことができない。このファ イルを読むためにはあらかじめAcrobat Readerというソフトをあらかじめインストールしておく必要がある。ありがたいこ とにこのソフトはフリーなのでWeb Siteからのダウンロード、専門雑誌等の付録から無料でインストールすることができ る。ただし、pdfの形式に変換するためのソフトは有料である。
従って、PDFを読むだけであればAcrobat Readerが導入された、パソコンと印刷機があれば十分に利用が可能であ る。現在、各職場で多数の職員がすでにパソコンを使用しているのを見ると、いずれは全員が使用者になるのは近いこ とだろう。中にはワープロ専用機のみを所有している人もいるが、現在、メーカーも生産を中止しはじめており、いずれ はパソコンのワープロに移行すると思われる。ワープロ専用機を買い換えようと思っても製品がないのだから仕方がな いことである。
このような一人一台の環境が整えばLANを利用して、すべての情報が紙中心からパソコン中心の情報交換ができる 世界ができあがる。すでに先進的な企業では、現実にこのような方法を採用している企業も多く見られるようになった。
このときこそPDFの利用が十二分に発揮される場面である。これにより、膨大な文書を書庫に入れておく必要がなくな り、省スペース化を図ることができる。また保存文書をPDFファイル変換して圧縮し、CD-ROM化すれば段ボール箱一 個で何十年分の文書の保存が可能となる。
3.PDFファイルの利用
ワープロ専用機で作る文書は意外に互換性がないケースが多い。せっかく苦労して作った文書やデータが、自分のパ ソコンでは読めないという経験は誰にもある。また、パソコンでも同じメーカー、同じソフトでも読めないケースがある。こ れはバージョンアップしたソフトでよく見かける現象であり、下位バージョンでは上位バージョンを読めないは当然であ る。
そこで登場するのがPDFである。PDFはソフトの種類やバージョンによらない共通形式である。従来、パソコンやワー プロで作成したデータを共有し、そして読む方法は一つしかなかった。その方法は文書やデータを紙に印刷し、配布する というやり方である。これは確かに確実な方法であるが、それらの文書は一時ファイルとして机に積み上げられていく。 次第にその山は成長し、いずれは雪崩を起こし、ついには重要文書ごと廃棄される運命にある。また、保管・分類が悪 いと、必要な文書を何十分もかけて探し出すというのがオチである。
PDFは電子文書の一種であるから、画面で読んだり、LAN、IPを使用して送ったり、必要ならば印刷できるという便利 なソフトなのです。
●PDFファイルの特徴
1.オリジナルのイメージを、文書を読む環境に関係なく、ほぼ忠実に再現することができる。また印刷品位も優れて いる。
2.元のアプリケーションソフトで作った文書やデータファイルより、一般にファイルサイズを小さくすることができる。
3.さらにオリジナルの文書とは別に、PDFファイル独自の情報を加えることができる。
・必要な部分だけコピーができる。
・しおりやリンクが付けられる。(後述)
・別PDFの内容を追加できる。
・注釈を付けることができる。(後述)
・ページを入れ換える。
・文書や絵(図)の一部を他のアプリケーションで再利用できる。
結論として、アプリケーションで作る文書やデータファイルは、それぞれ固有の形式で保存されています。それをPDF に変換することで、元のソフトとは関係なく、誰でも同じように読むことができるということでしょう。
●具体的な応用例
1.すべてのファイルをPDFすることができる。
今はやりのWord、Excel、PowerPointの御三家や一太郎、花子等のソフトを持っていなくともPDFによって変換して おけば、それぞれのアプリケーションに関係なく、Acrobatでいつでもそのファイルを読むことができる。
2.インターネットのホームページをまるごとPDFにすることによりブラウザが無くとも閲覧できるようになる。
3.一度作ったPDFをいつでも自在に編集でき、必要に応じて元の形式に戻すこともできる。
等々、そのほかにもいろいろな応用が考えられる。
ただし、前述したが、PDFのAcrobat Readerは無料でもPDFを作成するソフトAcrobatは有料である。実勢価格は 3万円弱なのでそれほど高いものではない。
4.PDFを作成してみよう
●動作環境
1.windows95以上
2.印刷文書をPDFするにはScannerの用意
できれば画像の文字をText化する文字認識エンジンがあればなおよい
3.余裕のあるHDD(スキャナーによる取り込み、画像処理)
4.必要に応じて動画、画像、音声処理ができればそれらのすべてをPDF化することも可能
Acrobatのインストールは同時にAcrobat Readerも導入される。導入は一般的なインストールであるが、プリンターの項 目にAcrobatの仮想印刷機ができあがっていること確認する。これと同時にPost Scriptの仮想印刷機も登録される。
次にWordの文書を例にとってPDFファイルに変換してみよう。WordのツールバーにはすでにAcrobatのインストール時 にアドインとしてアイコンが登録されているので、これを利用して変換作業に入る。
PDFファイルに変換するにはAcrobatのアイコンをクリックする。するとPDF WriterとDistillerのどちらかを聞いてくるので それに答えます。一般にはPDF Writerで間に合うようです。
なお、両者の違いは次の通りです。
1.Acrobat PDF Writerの場合
サイズの小さいPDFファイルを高速に作成できる。テキスト中心の文書向き。
2.Acrobat Distillerの場合
画像中心の文書や複雑なレイアウトの文書を精度の高いPDFファイルに変換する。
変換が終了するとWord形式とAcrobat形式の二つのファイルができる。
たとえばあるリポートをWordで作成したが、本文のテキストの他に写真、図版等を貼り付けたため巨大なファイルサイ ズになった。両者を比較するとWord形式の場合17000KB、Acrobatの場合481KB とサイズが非常に小さくなっ た。これがAcrobatの特徴の一つである圧縮が働いている証拠である。実に元のファイルの2パーセントに収まった勘 定になる。従って各種の圧縮ツールを使用してPDFをさらに圧縮してもそれほど圧縮されることはないので、そのままで 配布しても十分だと思われる。
次に印刷などそのファイルがない場合はどのようにしてPDFに変換するかである。これには次のような方法がある。ま ず、文書をスキャナーにかけて画像化してしまう方法である。このとき細部を再現するために、スキャナーのモードは30 0dpi以上の解像度が望ましい。そしてPDF化のためにはDistillerモードで行うのがベストであろう。しかしこの方法ではフ ァイルのサイズが大きくなるのが欠点である。試しに印刷物(23ページ分)をスキャナーで読んで、その画像をPDF化し たところ、実に5.83MBの大きさになった。
それではこのファイルを少しでも小さくできないものかということになる。その解決策としてスキャナーによる読み取りエ ンジンを使用することにより可能になる。最近の読み取りエンジンは認識率もほぼ100パーセントに近い認識を示す。 2,3年前の認識率とは雲泥の差である。
この読み取りエンジンで認識したファイルはText形式であるので、あらゆるアプリケーションで利用できる。さらに完成 したものを前述の方法でPDF化すればそれほどのサイズにならずにすむことになる。しかしこの方法は少し手間がかか るというのが欠点であろう。
以上で各種のファイルやデータをPDFファイルに変換するこということが、いかに簡単であるということが理解されたと 思う。何か新しいことをやろうとすると、まず「面倒くさい」とか「わからないから」といって敬遠するのを、しばしば見受けら れるが、まずは「習うよりは慣れよ」という一言につきる。
5.PDFの応用
PDFのソフトの説明書は当然PDFファイルであるがそれを印刷すると優に百科事典1冊分くらいあるそうだ。とてもで はないが、読む気にもなれないし、どこに何があるのかもわからない。
1.そこで考えられたのが「しおり」という方法である。これは一種の索引であり目次でもある。
この画面はAcrobat Readerの一部で、左側に目次にあたるフォルダーが見える。目的のフォルダーをクリックする と直ちにそのページを開くことができる。ページ数が多いファイルには有効な手段である。
2.今回の「文書のPDF化について」のリポートはできるだけ誰でわかるように書いたつもりであるが、やはり難解な 語句があったに違いないと思う。そこでPDFファイルにはわからない語句をマウスで指示すると「注釈」が出るよう に仕組むことができる。この方法はすでに各種アプリケーションのヘルプ機能で見ることができる。もちろんハイパ ーテキストリンク(HTML)でその該当ページへジャンプすることも可能である。
3.このほか「動画」、「音声」もPDF化が可能になっている。
このようにPDFはいろいろな使用方法があり、すべてを極めるためには相当な時間がかかる。しかし基本的なことだ け押さえると、これほど便利なツールはほかには例を見ないソフトである。PDFはまだ発展段階であり、これからもさら に使い勝手の良いソフトに仕上がっていくと思われる。
●保存文書のROM化
書庫等に保存されている文書をCD-ROMに一度焼き付けることで保管場所と取り出しが簡単になる。しかし、ROM化 のために膨大な時間と手間がかかることを覚悟しなければならない。そのためには専門の係を一時的に置いて整理さ せるのも一方法である。
また、日常でPDF化にするには頻繁にファイルやデータが変更する場合、変換するだけ無駄である。もちろんPDFファ イルを直接変更するのも可能であるが、配布物としてまとめる場合は圧縮効果や紙を使用しないということから、大いに 活用できると思う。
最後に紙の使用は避けて通らないわけにはいかないが、冒頭に書いたように電子機器の発達で紙の使用量が増え たのでは元の木阿弥である。従って新しい文書規定を作成し、少しでも紙の使用量を減らすべきであろう。
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